1)パフューム スターになる夢つかむまで
2010年01月01日
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ダンスを練習する生徒たち。将来のステージを思い、歌う=広島市南区のアクターズスクール広島、青山芳久撮影
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発声練習をする矢野未来さん
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Perfume。(左から)あ~ちゃん、のっち、かしゆか=©アミューズ
毎年気にしていたけど、大した活躍もできず、メールするのも恥ずかしかった。やっと送れるようになりました。
2008年2月22日。タレント養成所「アクターズスクール広島」(ASH)=広島市南区=のボイストレーナー田中都和子さん(42)の携帯電話に、誕生日を祝うメールが届いた。送り主は、アイドルユニット「Perfume」(パフューム)のあ~ちゃん。数年ぶりの教え子からの「便り」に、田中さんは昔を思い、感極まった。
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パフュームの3人は1999年、ASHの1期生として入学した。まだ小学生。土日に発声やダンスを学んだ。「あ~ちゃんは、よくしゃべる明るい子。のっちは最初から何でもできる子。かしゆかは、おとなしい子」。田中さんの記憶に残る当時の3人は、「ごく普通の子」だった。
翌2000年、パフュームを結成。ASHが開く発表会に少しでも多く出演するため、誰よりも目立つ位置で歌うため、同期全員がライバルだった。平日の放課後も遅い日は午後11時過ぎまで、土日は朝から、ASHのどこかでダンスのステップを踏んだ。
田中さんのレッスンは厳しさを増した。礼儀や普段の言葉遣い、忘れ物など、細かいことも見逃さず、厳しくしかった。「将来はプロになる子たち」と見込んだからだ。どんなにしかっても3人は目に涙をため、必ず謝ってきた。「私たちを見捨てないで」。そんな思いが、ひしひしと伝わってきた。
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鏡張りのフロアに、人気アイドルグループの軽快な歌が響く。リズムに合わせて踊る少女たちは、瞳を輝かせ、鏡の中の自分を見つめていた。
ASHには今、幼稚園児から大学生まで約100人が在籍する。長い手足を素早く動かし、切れのある動きを繰り出す小学6年生の矢野未来さん(12)も毎週末、発声やダンスのレッスンを受けに、呉市内から通っている。
入学したのは7年前。ASHの発表会で見たパフュームに魅せられた。ステージから自信に満ちた笑顔を振りまく3人。「この人たちみたいになりたい」と強く思った。
入学直後のレッスン。うまく踊れない時、かしゆかに声をかけられた。「間違っても、自信をもって踊れば、お客さんに気持ちが伝わるから」。今も忘れられない言葉だ。
手提げカバンに、7年前、3人と撮った写真をしのばせている。練習がつらい時に眺め、彼女たちが遅くまでASHに残って練習していた姿を思い出す。そのたび、「努力すれば、3人のようになれる」と力がわく。
今ではASHの中でもダンスの精鋭を集めたユニットに所属する。歌もダンスも、まだまだ満足できない。それでも、目指す夢はもう決めている。「3人のように、後輩にあこがれてもらえるような歌手になる」
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パフュームは03年に上京、本格的に活動を始めた。05年にメジャーデビューしたものの、出した4枚のシングルCDは不調。スケジュールも空白が目立ち、所々に小さなイベントやライブが入るだけ。しかし転機は07年に訪れた。CMに使われた「ポリリズム」が大ヒットしたのだ。
あ~ちゃんが08年2月、田中さんに送ったメールには、売れない時期の3人の思いがにじんでいた。「ようやくスタートラインに立てたね」と返信した田中さん。「お嫁に出した」思いで3人を見守りつつ、「第2のパフューム」を育てようとしている。
歌手になるという熱い思い、負けん気の強さ、決してあきらめない根性は群を抜いていた。しかし、それだけで売れるほど芸能界は甘くない。成功したのはなぜか。田中さんには一つの答えがある。
「3人には、奇跡を呼ぶ力があったんですよ」
◇Perfumeが振り返る
■広島アクターズスクール時代(1999~03年)
【のっち】 スクールで過ごした頃は、なんでも吸収できた時期。ダンスも歌も、大人との接し方も。最初は、どうしたら歌手になれるのか、どんな仕事なのか、まったくわからなかった。でも、とにかくテレビに出たかった。まずは同期よりも目立つ存在になるのが目標。つらいこともあるけど、同じ夢を持った仲間とは、学校の同級生以上に話が合ったし、練習時間は本当に楽しかった。
【あ~ちゃん】 まだ小学生だったし、具体的な夢なんてなかった。ただ、目立つことが大好きで、エンターテイナーになろうと必死にレッスンを受けた。そして、かしゆかとのっちに出会った。血液型もみんなA型。背丈もほぼ一緒。よく姉妹みたいって言われた。すぐにみんな、「夢をかなえるには、どうしても3人でやらなきゃだめだ」って考えるようになった。運命だったんだと思う。
【かしゆか】 スクールはパフュームの土台。少しでも多くステージに立ち、先生に評価され、事務所の人の目にとまろうと。(歌やダンスがうまい生徒を集めた)選抜クラスに入るのが、夢への近道だと思って頑張った。厳しく教えてもらい、ステージに立つうえでのルールをたくさん学べた。練習の合間、3人で近くのショッピングセンターに走ったり、「プリクラ」を何回も何回も撮ったり、楽しい思い出もたくさんある。
■東京進出(03~09年)
【のっち】
売れない時期が長かったけど、「成功してからじゃないと帰れない、帰りたくない!」とずっと思ってた。だから「ポリリズム」が売れて、事務所から配られる1カ月の予定表に「オフ」と書かれるようになった時は、うれしかった。それまでは、書く必要もないくらい仕事がなかったから……。
【あ~ちゃん】
スクールの生徒が東京に出るのは、パフュームが初めて。色んな期待と気持ちをいっぱい背負って出てきた。だから、売れない時も広島のイベントにたくさん呼んでもらったけど、申し訳なくて、帰るのが本当にいやだった。みんなに合わせる顔がなくて、スクールの人たちから隠れるようにしていた。あれは悲しかったな。
でも、絶対に成功する!と思っていたから、「運命的に出会った3人で、パフュームを続けたい」という気持ちは変わらなかった。1人でも「もういやだ」と口にしていたら、そこでパフュームは終わっていたはず。ファンの皆さんや家族、くじけそうな時に励ましてくれた事務所のスタッフとか、色んな人との出会いが、たくさんの奇跡を生んでくれたんだと思う。
■これから(10年~)
【のっち】
スクールのみんなの目標にされていることが、まだ信じられない。今年は、パフュームを見てくれる皆さんに、常にわくわくしてもらいたい。そして、自分もドキドキできるような活動をしていきたい。
【かしゆか】
夢を追いかけている今のスクールの人たちに、あこがれてもらえるのは本当にうれしいこと。皆さんの近くで、皆さんを実感できるライブを、今年はたくさんやっていきたい。
【あ~ちゃん】
パフュームにとって広島は誇り。広島弁のトークも、無くてはならないもの。広島の色んなところでライブをさせてもらったけど、今度はグリーンアリーナでやりたいな。実現したら、ぜひ来てくださいね。
≪メモ≫ パフューム 広島出身の3人、のっち=大本彩乃(21)▽かしゆか=樫野有香(21)▽あ~ちゃん=西脇綾香(20)によるアイドルユニット。2007年発売の「ポリリズム」が大ヒット。その後もヒット曲を連発した。08年4月に発売したアルバム「GAME」で、初のオリコン週間チャート1位を獲得。続くアルバム「トライアングル」も1位に輝いた。今月13日には、09年の全国ツアーの模様を収めた2枚組みDVD「直角二等辺三角形TOUR」が発売される。
これまで多くの歌い手や作家が、広島でそれぞれの音楽を育みました。夢を追った軌跡、そして多くの人に夢を与える存在になるという奇跡。故郷の空の下で紡がれた、二つの「キセキ」に迫ります。(鬼原民幸)